1. はじめに

賃貸物件の退去時、よく問題になるのが「ハウスクリーニング代」の負担についてです。契約時には気にしていなかったものの、退去の際に高額なクリーニング代を請求され、思わぬ出費に驚く借主も少なくありません。
そもそもハウスクリーニング代は借主が支払うべきものなのでしょうか? それとも、貸主(大家)が負担すべきものなのでしょうか? 契約書に「借主負担」と書かれている場合でも、必ずしも支払わなければならないわけではありません。
本記事では、ハウスクリーニング代の基本的なルールや、借主が負担すべきケース・負担しなくてもよいケースを解説します。また、トラブルを避けるためのポイントも紹介しますので、退去時の不安を減らすためにぜひ参考にしてください。

2. ハウスクリーニング代とは?

ハウスクリーニングの基本的な内容
ハウスクリーニングとは、専門業者による賃貸物件の清掃作業を指します。通常の掃除とは異なり、細かい部分まで徹底的にクリーニングされるのが特徴です。退去後、新しい入居者を迎える前に物件を清潔な状態に戻すために行われます。
クリーニングの主な作業範囲
ハウスクリーニングの具体的な作業内容は以下のようなものが含まれます。
キッチン周り:換気扇、コンロ、シンク、収納内部の清掃
浴室・トイレ:カビ取り、鏡の水垢除去、排水溝の清掃
床・壁・天井:フローリングのワックスがけ、壁紙のホコリ除去
窓・サッシ:ガラスの清掃、サッシやレールのほこり取り
エアコン:フィルター清掃、内部クリーニング(場合による)
これらの作業を行うことで、次の入居者にとって快適な住環境が整えられます。
ハウスクリーニング代の相場
ハウスクリーニング代は、物件の広さや清掃内容によって異なりますが、一般的な目安としては以下の通りです。
1K・1R … 15,000~30,000円
1LDK・2DK … 30,000~50,000円
2LDK・3DK … 40,000~60,000円
3LDK以上 … 50,000円~
特に、喫煙やペット飼育をしていた場合、通常のクリーニングよりも費用が高くなることがあります。
通常の掃除との違い
通常の掃除は、日常生活の中で借主が行うものですが、ハウスクリーニングはプロが専門機材や洗剤を使用して徹底的に汚れを落とします。例えば、換気扇の油汚れや浴室の黒カビなど、家庭用の掃除では落としにくい汚れまで取り除かれます。
なぜハウスクリーニングが必要なのか?
賃貸物件では、退去後に次の入居者がスムーズに住めるようにするため、一定の清掃が必要です。貸主側としても、清潔な状態を保つことで物件の価値を維持し、空室期間を短縮できるメリットがあります。そのため、多くの物件でハウスクリーニングが実施されるのです。
ただし、その費用を「誰が負担するのか?」がトラブルの原因となることが多く、契約内容や法律によって負担の可否が決まる点が重要です。
3. 借主がハウスクリーニング代を負担するケース

ハウスクリーニング代の負担については、契約内容や汚れの程度によって異なります。以下のようなケースでは、借主が費用を負担する可能性が高いです。
契約書に「ハウスクリーニング代を借主負担」と明記されている場合
多くの賃貸契約では、特約として「退去時にハウスクリーニング代を借主が負担する」旨が記載されています。この特約が有効であれば、借主は費用を支払う義務があります。
例:契約書の特約文
「退去時には、借主の負担により専門業者によるハウスクリーニングを実施するものとする。その費用は借主が支払うものとする。」
ポイント:特約の有効性
特約がある場合、借主は原則として負担する必要がある
ただし、特約が一方的に不利な内容であったり、契約時に十分な説明がなかった場合は無効となる可能性もある
借主の過失による汚損・破損がある場合
通常の使用ではなく、借主の過失によって発生した汚れや損傷がある場合は、その修繕やクリーニング費用を負担する必要があります。
具体例
タバコのヤニ汚れや臭い → 壁紙の張り替え・消臭作業が必要
ペットによる汚れや臭い → フローリングの傷・尿によるシミ、消臭清掃
カビや水垢の放置 → 風呂場やキッチンのカビ、排水口の詰まり
キッチンの油汚れ → 換気扇やコンロ周りの頑固な油汚れ
家具の跡やフローリングの傷 → 重い家具を引きずった傷やカーペット跡の変色
これらは「通常の使用による経年劣化」には該当せず、借主の責任で原状回復する必要があるため、ハウスクリーニング代を請求されることがあります。
クリーニング費用を敷金から差し引くと定められている場合
契約時に敷金が預けられており、「クリーニング費用は敷金から差し引く」 という取り決めがある場合、退去時に別途請求されることはなくとも、敷金の一部がクリーニング費用として充当されます。
例:契約書の条文
「退去時には、ハウスクリーニング代として敷金より〇〇円を差し引くものとする。」
この場合、契約時に決められた範囲内での負担となるため、別途費用を請求される心配は少なくなります。ただし、実際のクリーニング費用が敷金の額を超えた場合は、追加請求されることもあります。
「ハウスクリーニング費用負担」が合理的と認められる場合
特約がなくても、借主が極端に部屋を汚している場合は、原状回復の範囲として負担を求められることがあります。これは、民法や国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づく判断となります。
例えば、
ゴミを放置して悪臭や害虫が発生した
壁紙に落書きをした、飲み物をこぼしてシミを作った
台所や浴室を長期間掃除せず、ひどい汚れがある
このような場合、通常の使用範囲を超える「借主の過失」と判断され、クリーニング費用が請求されることがあります。
退去時の原状回復義務に含まれる場合
賃貸契約では、「原状回復義務」が借主に課されることが一般的です。ただし、ここでいう「原状回復」とは、経年劣化や通常の使用による傷みを修繕するものではなく、借主が原因で発生した損耗や汚損を修復することを意味します。
ハウスクリーニングが「原状回復の範囲」に含まれると判断された場合、借主が負担することになります。
借主が負担するケースのポイント
- 契約書にハウスクリーニング代の負担が明記されている
- 借主の過失による汚れ・損傷がある(タバコ・ペット・カビ放置など)
- 敷金からの差し引きが契約で定められている
ハウスクリーニング代を請求された際は、契約書を確認し、特約の有無や汚れの程度を冷静に判断することが重要です。納得できない場合は、大家や管理会社と交渉したり、消費者センターに相談することも検討しましょう。
4. 借主が負担しなくてもよいケース

ハウスクリーニング代は、すべてのケースで借主が負担するわけではありません。以下のような場合には、借主が費用を支払う必要がない、または交渉できる可能性があります。
契約書に「ハウスクリーニング代借主負担」の特約がない場合
賃貸契約では、基本的に契約書の内容が優先されます。契約書に「退去時にハウスクリーニング代を借主が負担する」と明記されていない場合、借主が負担する義務はありません。
確認すべきポイント
「退去時のクリーニング費用」についての記載があるか?
「ハウスクリーニング代は貸主負担」と書かれていないか?
もし契約書に明確な記載がなければ、原則として借主が費用を負担する必要はなく、貸主が負担するのが基本です。
通常の使用による経年劣化や自然損耗の場合
賃貸物件では、普通に生活する中で発生する汚れや劣化(経年劣化・自然損耗)は、借主の負担ではなく貸主の負担とされています。これは、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも明記されています。
経年劣化・自然損耗の具体例
フローリングの軽微な傷や色あせ(通常の歩行によるもの)
壁紙の黄ばみや日焼け(時間の経過による変化)
畳の変色やへたり(長年の使用によるもの)
家具の設置による床やカーペットの跡
キッチンや浴室の軽度な水垢や使用感
こうした汚れや傷は、物件を通常通り使用していれば避けられないため、借主がクリーニング費用を負担する義務はありません。
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クリーニング費用が敷金から引かれる根拠がない場合
契約時に敷金を支払っている場合、退去時に敷金からハウスクリーニング代を差し引くことがあるかもしれません。しかし、契約書にその旨が明記されていない場合、貸主が勝手にクリーニング費用を差し引くことはできません。
敷金の精算について契約書を確認し、不明な点があれば貸主や管理会社に説明を求めましょう。
「ハウスクリーニング代として敷金から〇〇円を控除する」などの記載がなければ、敷金を全額返還してもらうよう交渉することが可能です。
クリーニングの範囲が不合理に広い場合
ハウスクリーニングは一般的に「退去時の清掃」ですが、中には不当な請求をする貸主や管理会社もあります。以下のような場合は、クリーニング代の一部または全額を拒否できる可能性があります。
本来借主が負担すべき範囲を超えた高額な請求
通常の清掃ではなく、リフォームに近い作業(壁紙張り替え、フローリングの全面修理など)
借主が綺麗に掃除して退去したにもかかわらず、必要以上のクリーニング費を請求される
貸主側が求めるクリーニング費用が妥当かどうか、契約書やガイドラインを参考に確認しましょう。
退去時に借主が十分に掃除をしている場合
もし借主が十分に清掃をして退去し、部屋が清潔な状態である場合、追加のハウスクリーニングが不要になることもあります。特に、以下のような場合はクリーニング代の請求を回避できる可能性があります。
- 掃除機・雑巾がけをし、ゴミやホコリがない状態にしている
- 水回り(キッチン・浴室・トイレ)の掃除を行い、カビや水垢が残っていない
- 窓やサッシ、ベランダの清掃も実施している
貸主がクリーニング代を請求してきた場合でも、「すでに清掃済みである」ことを証拠として提示すれば、交渉できる可能性があります。
ハウスクリーニング代の請求が不当な場合
中には、貸主や管理会社が不当に高額なクリーニング費用を請求するケースもあります。特に、以下のような場合は注意が必要です。
- 相場より明らかに高い請求(1Kで5万円以上など)
- クリーニングの内訳が不明確
- 見積書や領収書を提示せずに請求される
このような場合は、支払いをすぐに行わず、契約内容や相場を確認し、不当な請求であれば消費生活センターや弁護士に相談することも検討しましょう。
退去時にトラブルを避けるためには、契約書の内容をよく確認し、事前に清掃を行い、請求内容を冷静にチェックすることが大切です。もし納得できない請求を受けた場合は、交渉するか、消費者センターに相談して適切に対処しましょう。
5. トラブルを避けるためのポイント


ハウスクリーニング代をめぐるトラブルは、契約内容の確認不足や退去時の対応によって発生することが多いです。以下のポイントを押さえておくことで、不要な請求を回避し、スムーズに退去できるようになります。
契約前に「ハウスクリーニング代」の特約を確認する
トラブルの多くは、契約書に記載された特約が原因で発生します。契約時に以下の内容を必ず確認しましょう。
確認すべき契約書の項目
- 「ハウスクリーニング代は借主負担」と明記されているか?
- 「退去時のクリーニング費用は敷金から差し引く」となっているか?
- クリーニングの範囲や金額が明確に記載されているか?
- 契約時に特約について十分な説明を受けたか?(口頭だけでなく書面で記載があるか)
もし特約が不明瞭であれば、貸主や管理会社に確認し、納得できない場合は契約前に交渉することが大切です。
退去前に自分で清掃を行う
退去時の状態が良ければ、クリーニング費用を抑えられる可能性があります。特に、通常の生活で発生する汚れについては、事前に掃除しておくことで不要な請求を防げます。
退去前にやるべき掃除ポイント
- 床や壁のホコリ・汚れを拭き取る
- 水回り(キッチン・浴室・トイレ)の掃除を徹底する
- 換気扇やコンロの油汚れを落とす
- 窓やサッシの掃除を行い、ホコリやカビを除去する
- エアコンのフィルターを掃除する
掃除をしっかり行った上で写真を撮っておけば、退去後のトラブルを防ぐ証拠として活用できます。
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退去時の状態を写真・動画で記録する
退去時の室内の状態を記録しておくことで、後から発生するトラブルに備えることができます。
もし後から不当な請求を受けた場合、写真や動画が証拠となり、交渉を有利に進められます。
クリーニング費用の相場を確認する
貸主や管理会社から請求されるハウスクリーニング代が適正かどうか、相場と比較しましょう。
一般的なクリーニング費用の目安
1K・1R … 15,000~30,000円
1LDK・2DK … 30,000~50,000円
2LDK・3DK … 40,000~60,000円
3LDK以上 … 50,000円~
もし相場より高額な請求を受けた場合は、
見積書を請求する
他のクリーニング業者の料金と比較する
契約書に具体的な金額が記載されているか確認する
これにより、不当に高額な請求を回避できます。
クリーニング代の請求根拠を確認し、納得できない場合は交渉する
退去後にクリーニング代を請求された場合、請求内容を詳細に確認し、納得できない場合は交渉することが可能です。
契約書に特約がなく、通常の使用による汚れであれば、借主がクリーニング代を負担する必要はありません。
不当な請求を受けた場合は消費者センターや専門機関に相談する
貸主や管理会社が法外なクリーニング代を請求してくるケースもあります。その場合は、専門機関に相談することで適切な対応ができます。
相談先
消費生活センター(国民生活センター)
各自治体の住宅相談窓口
宅地建物取引業協会や不動産関連の相談窓口
弁護士(法テラスなどの無料相談を利用)
これらの機関では、適正な負担割合についてアドバイスを受けることができ、不当な請求を拒否するための手続きについても案内してくれます。
退去時のハウスクリーニング代をめぐるトラブルを回避するためには、契約内容を把握し、退去時の状態を記録し、請求内容を冷静に判断することが重要です。万が一不当な請求を受けた場合でも、適切な対応を取ることで不要な出費を防ぐことができます。
6. まとめ

ハウスクリーニング代をめぐるトラブルを防ぐには、契約内容の確認・退去時の清掃・請求内容の精査が重要です。契約前に「ハウスクリーニング代は借主負担」という特約があるかを確認し、不明点は貸主や管理会社に問い合わせましょう。
退去前に掃除を行い、室内の状態を写真や動画で記録しておくと、後のトラブルを防ぐ証拠になります。また、請求されたクリーニング費用が相場と比べて妥当かをチェックし、不当な請求には交渉や専門機関への相談で対処しましょう。
特に、通常の使用による汚れ(経年劣化)や契約に明記されていない費用を請求された場合は支払う義務はありません。事前の準備と冷静な対応で、無駄な出費を防ぎ、スムーズに退去できるようにしましょう。

