1. はじめに
近年、政府や専門家から「南海トラフ地震」や「首都直下地震」の発生確率が高まっていると警告されています。これらの巨大地震は、甚大な人的・物的被害だけでなく、賃貸住宅の入居者にも直接的な影響を与える可能性があります。
家具の転倒や建物損壊によるケガ、避難生活の長期化、家財の損失、賃貸契約の継続可否など、想定されるリスクは多岐にわたります。
本記事では、賃貸物件に住む方が知っておくべき地震リスクと、日頃からできる備えについて解説します。
2. 南海トラフ地震・首都直下地震とは

南海トラフ地震とは

南海トラフ地震は、日本列島の南岸に延びる「南海トラフ」と呼ばれる海底プレート境界で発生する巨大地震です。
フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことで歪みが蓄積し、それが一気に解放されることで発生します。
主な特徴
発生確率:今後30年以内に 70〜80%(政府予測)
規模:マグニチュード8〜9クラス
被害範囲:静岡〜九州太平洋側までの広範囲
主な被害:震度6強〜7の揺れ、最大10m超の津波、長期停電・断水
沿岸部では津波による甚大な被害が想定され、内陸部でも建物倒壊や火災、交通寸断、物流停止など生活全般に影響が及びます。
首都直下地震とは

首都直下地震は、東京やその周辺直下を震源とするマグニチュード7クラスの地震を指します。
特に懸念されるのは、東京湾北部直下を震源とするM7.3程度の地震です。
主な特徴
発生確率:今後30年以内に 約70%
予想震度:東京23区の多くで震度6強以上
主な被害:木造住宅密集地の倒壊・火災、道路寸断、避難所不足、ライフライン停止
社会的影響:行政・経済・交通機能の停止による全国的な混乱
都市部特有の「人口密集」や「建物密集」による二次被害が大きく、避難や救援活動が難航する可能性があります。
賃貸生活者にとっての共通リスク
建物の耐震性が不十分な場合、倒壊や損壊の危険
家具・家電の転倒によるケガや家財損失
建物の使用禁止や損壊で強制退去の可能性
交通やライフラインの停止による長期避難生活
ポイント
南海トラフ地震も首都直下地震も、「高確率で発生する巨大災害」と位置付けられています。
賃貸だからこそ、契約内容・保険・日常の備えを早めに確認しておくことが重要です。
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3. 賃貸物件で想定されるリスク

建物倒壊・損壊のリスク
旧耐震基準(1981年5月以前)の建物は震度6強〜7で倒壊の恐れ
木造や軽量鉄骨造は、鉄筋コンクリート造に比べて耐震性が低い場合が多い
外壁や天井の落下、ひび割れ、配管破損による二次被害も発生
賃貸住宅の耐震性能は、築年数や構造、管理状況によって大きく異なります。特に築40年以上の物件は、外観がきれいでも耐震補強が不十分なことがあります。
家財の損失とケガ
家具・家電の転倒、棚からの落下物による破損やケガ
パソコン・テレビ・冷蔵庫など高額家電の損害は火災保険で補償されない場合あり
ガラスの飛散や照明の落下による負傷リスク
賃貸では建物自体は大家の資産ですが、室内の家財はすべて入居者の自己責任です。保険未加入だと全額自己負担になる可能性があります。
居住不能による退去・引っ越し
建物が「危険」と判定されると、立ち入り禁止や解体の対象に
仮設住宅や他の賃貸物件に移らざるを得なくなる
ペット可物件や特定条件の物件は再確保が難しいケースも
地震後は空き物件が急減し、賃料の高騰や条件の悪化が起こる可能性があります。
契約上の不利益
建物が損壊しても、契約内容によっては家賃が発生し続ける場合がある
修繕や立て直しのため、オーナー都合で契約解除となるケース
保証会社や連帯保証人への影響
契約時に「災害時の家賃扱い」「解約条件」を確認しておくことが重要です。
生活基盤の喪失
上下水道・電気・ガスの停止で長期間生活できない
周辺道路の寸断や交通機関の麻痺で通勤・通学不可に
商業施設や医療機関の閉鎖で日常生活が困難に
ライフラインの復旧には、阪神淡路大震災で最長3か月、東日本大震災では半年以上かかった地域もあります。
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4. 地震保険と契約時の確認ポイント

地震保険の必要性
多くの賃貸契約では火災保険への加入が義務づけられていますが、火災保険だけでは地震による損害は補償されません。
地震・噴火・津波による下記の損害は、地震保険に加入しなければ補償対象外になります。
建物損壊
家財破損
焼失や流失
特に賃貸では建物部分は大家の資産ですが、室内の家財は入居者自身が守る必要があります。
地震保険で補償されるもの
家財の損害(テレビ・冷蔵庫・パソコン・家具など)
損壊の程度による定額支払い(全損・半損・一部損)
仮住まい費用は原則補償されないが、特約で追加可能な場合あり
※加入は火災保険とセットが基本で、単独加入は不可です。
契約時に必ず確認すべきポイント
建物の耐震性能
新耐震基準(1981年6月以降建築)か
2000年の耐震基準改正後か(より厳格な基準)
耐震診断や補強工事の有無
保険の補償範囲
火災保険に地震保険が付帯しているか
家財の補償額が生活実態に見合っているか
特約(臨時費用・家賃補償特約など)の有無
災害時の契約条件
建物損壊時の家賃発生有無
全壊や長期修繕時の契約解除条件
オーナー都合解約の場合の補償や退去費用負担
賃貸特有の注意点
地震で建物が全壊しても、契約内容によっては家賃請求が続くケースがある
家財保険に加入していないと、家具・家電は全額自己負担
災害時の立ち退き費用(引っ越し代・敷金・礼金)は補償されない場合が多い
5. 賃貸でできる地震対策

室内の安全対策
賃貸住宅は構造変更が難しいため、家具や家電の固定・配置の工夫が重要です。
主な対策
家具・家電をL字金具や突っ張り棒で壁・天井に固定
家具の下に耐震マットを敷き、滑りや転倒を防止
寝室や避難経路に大型家具を置かない
窓ガラスや食器棚には飛散防止フィルムを貼る
照明器具の落下防止チェーンを設置
備蓄の確保
ライフライン停止に備え、最低3日分、可能なら1週間分の備蓄を用意します。
基本セット
飲料水:1人1日3Lが目安(3日分で9L)
非常食:レトルト・缶詰・栄養補助食品など
モバイルバッテリー・乾電池式充電器
懐中電灯(ヘッドライトタイプが両手が空き便利)
簡易トイレ(袋タイプや凝固剤)
常備薬・救急セット
避難計画と情報共有
賃貸でも、避難のシミュレーションは欠かせません。
確認すべきこと
最寄りの避難所と経路(昼間・夜間の両方)
家族・同居人との安否確認方法(災害用伝言ダイヤル171やLINE災害モード)
管理会社や大家の緊急連絡先
停電時でも確認できる防災アプリのインストール(例:Yahoo!防災速報)
契約・保険面での備え
生活面の対策と同時に、契約や保険も事前に見直しておきましょう。
火災保険に地震保険が付帯しているか確認
家財保険の補償額が生活実態に合っているか
災害時の契約解除条件や家賃発生条件を把握
6. 発生後の行動と注意点

揺れが収まった直後の行動
まずは自分と周囲の安全を確認(落下物・ガラス片・火の気に注意)
ガスの元栓を閉め、ブレーカーを落とす(通電火災防止)
余震に備え、家具や建物の危険箇所から離れる
建物の安全確認
外壁や柱、天井に大きな亀裂がないか目視確認
ドアや窓の開閉が困難になっていないか(歪みの兆候)
水漏れやガス臭がある場合はすぐに管理会社・ガス会社へ連絡
もし「危険」や「立入禁止」の張り紙が貼られたら、速やかに避難し立ち入らないことが重要です。
避難の判断と行動
強い余震や津波警報が出ている場合はすぐに避難
避難時はエレベーターを使用せず階段を利用
避難所に行く場合は、身分証・保険証・常備薬・貴重品を持参
ペット同行可否は事前に確認(避難所によって異なる)
情報収集と安否連絡
ラジオ・スマホアプリ(Yahoo!防災速報など)で正確な情報を確認
災害用伝言ダイヤル(171)やLINE災害連絡機能で家族や知人へ無事を報告
SNSでの情報は公式発表と照合し、デマに注意
保険請求・契約対応
損害箇所を写真・動画で記録(建物内外・家財・設備)
管理会社・大家へ被害状況を報告
火災保険・地震保険の窓口へ早めに連絡し、請求手続き開始
契約解除や引っ越しの必要がある場合は、書面で条件を確認
二次被害への注意
余震による倒壊や落下物
通電再開時の火災(ブレーカーを落とすことが重要)
断水時の衛生不良による感染症
長時間の避難生活による健康被害(エコノミークラス症候群など)
7. まとめ

南海トラフ地震や首都直下地震は、今後30年以内に高い確率で発生すると予測されており、賃貸住宅に住む私たちも例外ではありません。
築年数や構造による耐震性の違い、家財や生活拠点を失うリスク、契約上の不利益など、事前に理解しておくべき点は多くあります。火災保険だけではカバーできない地震リスクには、地震保険の加入や契約内容の確認が不可欠です。
また、家具固定や備蓄などの物理的対策と、避難計画・連絡体制の整備が命と生活を守ります。「備えあれば憂いなし」、日常の中で少しずつ準備を進めましょう。
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