高齢者向けバリアフリー賃貸、物件選びの必須チェック項目とは?

1. はじめに

高齢になってからの住まい選びでは、「段差の少なさ」や「安全性の高さ」など、日常生活での負担を減らす工夫が欠かせません。

特に賃貸物件の場合、内見時にしっかりとチェックしないと、住み始めてから使いにくさや危険を感じることもあります。

本記事では、高齢者が安心・快適に暮らせるバリアフリー賃貸を選ぶための必須チェック項目をわかりやすく解説します。

2. 玄関と出入口の安全性

段差と床の安全

段差の許容目安:玄関・室内出入口とも2cm以下が理想。超える場合は置き型スロープ(勾配1/12〜1/15目安)で解消。

床の滑りにくさ:土間・玄関タイルは濡れると滑りやすい。ノンスリップマット滑り止めテープの設置可否を確認。

敷居の形状:角が立っているとつまずきやすい。面取り段差見切りでの対処が可能か。

転倒事故の多くは出入口の段差で起きます。内見時は靴を履いたまま出入りして段差の“引っかかり”を体感しましょう。段差が避けられない場合でも、賃貸でも使える置き型スロープや段差解消マットで改善できることが多いです。

ドアの種類・開閉のしやすさ

ドアタイプ引き戸>片開きドア。引き戸は開閉時の身体の後退が不要で安全。

有効開口幅80cm以上が望ましい(歩行器・車いす想定なら85cm以上)。

レバーハンドルレバー式だと握力が弱くても操作が容易。丸ノブは避けたい。

ドアクローザー閉まる速度・力の調整が可能か。強すぎると挟み込みやバランス崩しの原因。

ドアストッパー:足元の突起型はつまずきやすい磁石タイプや上部ストッパーが安全。

ドアは“軽く・ゆっくり・少ない動作”で開閉できるかがポイント。重い扉や戻りが強いクローザーは危険です。管理会社に調整や交換の可否を確認しましょう

手すり・掴まれる場所

配置玄関上がり框・廊下の始点・トイレ出入口に連続して掴める手すりが理想。

形状直径3.2〜3.8cmの円形が握りやすい。

取り付け:賃貸は突っ張り・置き型・床固定ベースなど原状回復可能タイプを検討。

立ち座り・方向転換の“起点”に手すりがあると転倒リスクが大きく下がります。ビス止めが必要な場合は必ず事前に許可を取りましょう。

照明・視認性(見えやすさ)

人感センサー自動点灯で夜間のつまずきを予防(電池式で賃貸でも設置容易)。

足元灯:コンセント式の常夜灯テープライトでドア周りを明るく。

色・コントラスト:敷居や段差の縁に色差があると認識しやすい。

表札・鍵穴位置屈まず届く高さかも確認。

“暗い・見えにくい・境目が分かりにくい”は転倒の三大要因。人感ライトと足元灯を併用すると安心です。

鍵・インターホン・防犯と両立

鍵の操作性キー差し込みが難しい場合は貼り付け型スマートロックを検討(原状回復可)。

インターホンモニター付・録画機能があると無用な出入りを減らせる。

ドアチェーン/ガード操作しやすい形状か。高すぎ・低すぎだと使いにくい。

“見てから開ける・簡単に開け閉めできる”が基本。操作が複雑だと無理な姿勢になり、事故のもとです。

共用部〜玄関までの動線

エレベーター停止階・停止時間帯の制限の有無。乗り場までの距離は短いか。

共用廊下傾斜・段差・凹凸の有無、足元の明るさ。

雨風の影響風雨が直接当たる動線は滑りやすい。屋根や防滑対策があるか。

室内だけでなく、“建物入口→玄関→主要室”までの一筆書きの動線で安全かを見ます。荷物を持った状態でも再現して歩いてみましょう。

季節・天候別リスク

雨の日:濡れた靴底で滑らないか、吸水・速乾マットを置けるスペースがあるか。

冬場:玄関が極端に冷えると体がこわばり転倒リスク増。すきま風底冷えの有無を確認。

賃貸でできる後付けアイテム(原状回復OK中心)

置き型スロープ/段差見切り

突っ張り・置き型手すり/スタンド手すり

電池式人感ライト・足元灯

滑り止めマット/テープ(段差エッジにも)

貼り付け型スマートロック

玄関ベンチ(高さ40〜45cm目安):座って靴が履ける

内見時の実践チェックリスト

玄関・出入口の段差は2cm以下か/代替策が取れるか

ドアは軽く開閉でき、有効開口80cm以上あるか

レバーハンドルで、クローザーの戻りが強すぎない

手すり(または設置余地)が動線上にあるか

照明は十分か(人感ライトの追加が可能か)

共用部〜玄関までに段差・傾斜・暗がりがないか

雨天想定で滑りやすい箇所がないか

鍵・インターホンは操作しやすいか(モニター付きか)

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3. 室内の移動しやすさ

廊下・ドア幅の確保

理想寸法

車いす利用…有効幅85cm以上

歩行器・杖利用…有効幅80cm以上

引き戸優先

開閉時に後退動作が不要で、車いすや歩行器も通りやすい。

内開きドアの危険性

開けた先に人や物があると接触事故のリスクあり。


狭い廊下やドア幅は、日常の移動ストレスだけでなく緊急時の避難にも影響します。内見では実際に肩幅や車いす幅を想定し、荷物を持った状態で通過してみると実感できます

段差の有無と解消方法

室内段差の目安:理想はフラット(0cm)。許容は2cm未満

よくある段差箇所

キッチン入口

和室との境の敷居

浴室入口の立ち上がり

改善方法(賃貸OK)

置き型スロープ、段差解消マット、段差見切りカバー。

段差は「気づけば慣れる」と思われがちですが、慣れるほど油断による転倒リスクが増します。特に寝室〜トイレ・浴室間は夜間移動が多く、段差ゼロが望ましいです。

床材の安全性と滑りにくさ

安全性の高い素材:クッションフロア、コルク材、ノンスリップ加工フローリング。

危険な床材:鏡面仕上げフローリング(靴下で滑りやすい)、タイル張り(濡れると危険)。

改善方法:滑り止めマット、カーペットタイル(薄手・固定タイプ)を追加。

床材は「冬場の冷たさ」や「音の響き」も考慮が必要です。硬く冷たい床は足腰への負担増にもつながります。

家具配置と動線の確保

通路幅:家具と壁の間は60cm以上(車いすなら90cm以上)を確保。

角の出っ張り:テーブルや棚の角はガードカバーで保護。

動線の単純化:寝室〜トイレ〜リビングが一筆書きで移動できる間取りが理想。

家具は「置ける場所」ではなく「安全に移動できる動線」が基準です。内見時は実際の家具配置を想定して歩き、方向転換がスムーズか確かめましょう

照明・視認性(室内)

廊下の足元灯:夜間トイレ移動の安全性アップ。

段差や境目の色差:床材やマットで境界を視覚的に分かりやすく。

スイッチ位置:立ったまま・座ったままでも操作できる高さかを確認。

夜間の暗さや光のムラは転倒の原因。電池式の足元ライトや人感センサーライトは賃貸でも設置しやすくおすすめです。

冷暖房効率と移動の快適さ

室温差の少なさ:廊下やトイレが極端に寒いと、血圧変動やヒートショックの危険。

仕切りの有無:開放的すぎる間取りは冬場の冷え込みに注意。

改善策:突っ張りポール+カーテンで仕切りを作る、ドア下部の隙間風防止。

高齢者は温度変化に敏感。特に移動中の寒暖差は体調を崩す原因になるため、室温差の少ない構造を選びましょう。

賃貸でできる室内移動サポート(原状回復OK)

置き型・突っ張り型手すり

段差スロープ・段差見切り

滑り止めマット/カーペットタイル

電池式足元ライト・人感ライト

家具の角ガード

突っ張りカーテンで温度差対策

内見時の実践チェックリスト

廊下幅は80cm以上(車いす利用なら85cm以上)あるか

出入口が引き戸または開けやすいドアか

室内に2cm以上の段差がないか(特に寝室〜トイレ間)

床材は滑りにくく、冷えにくい素材か

家具配置後も通路幅60cm以上が確保できそうか

夜間の移動経路に照明が届くか(足元灯追加可か)

廊下やトイレの室温差が大きくないか

4. 水回りの使いやすさ

浴室の安全性

出入口の段差:理想は2cm以下。それ以上の場合は置き型スロープや段差解消マットで対策可能か確認。

床材の滑りにくさ:ノンスリップ加工の有無。濡れても滑りにくいか、実際に触って確かめる。

手すりの設置位置:出入口・洗い場・浴槽内の3カ所にあると安全性が高い。

浴槽の高さ:40〜45cm程度がまたぎやすい。高すぎ・深すぎは危険。

浴槽の形状:半身浴槽や腰掛けスペース付きは立ち座りが楽。

高齢者の浴室事故は転倒や溺水が多く、ほとんどが出入口や浴槽のまたぎで発生します。特に冬場はヒートショック対策として脱衣所との温度差もチェックが必要です。

トイレの使いやすさ

出入口の幅:有効幅80cm以上が望ましい。車いす利用なら85cm以上。

室内の広さ:介助が必要な場合を想定し、便座前に80cm以上のスペースがあると安心。

便座の高さ:座って立ち上がりやすい40〜45cmが理想。

手すりの位置:便器横にL字型、または跳ね上げ式手すりがあると安全。

ドアタイプ:引き戸または外開きが安全(内開きは転倒時に救助しにくい)。

トイレは一日に何度も使う場所なので、出入口や便座の高さが身体に合っていないと大きな負担になります。引き戸や外開きドアは緊急時の介助もしやすく安心です。

洗面台・脱衣所の使いやすさ

高さ:立位・座位どちらでも使いやすい75〜80cmが目安。

足元スペース:椅子や車いすを近づけられる構造か。

水栓の形状:レバー式やタッチレス式が握力の弱い人にも便利。

収納の位置:よく使う物は目線〜腰の高さに置けるか。

脱衣所の温度:ヒーター設置可否、断熱性能を確認。

洗面台は「立つ」「座る」両方の姿勢に対応できると長く使えます。冬場の脱衣所の寒さはヒートショックの大きな原因になるため、温度管理のしやすさも大切です。

賃貸でもできる水回り改善アイテム(原状回復OK)

浴室用置き型手すり・吸盤式手すり

段差解消スロープ(防水タイプ)

滑り止めマット・吸盤付きバスマット

跳ね上げ式便座手すり

レバー式蛇口ハンドルアタッチメント

防水仕様の脱衣所用セラミックヒーター

内見時の実践チェックリスト

浴室・脱衣所・トイレの出入口幅は80cm以上あるか

浴室の段差は2cm以下(または解消可能)か

床が滑りにくい素材か(実際に濡らす想定で確認)

浴槽の高さは40〜45cm

トイレの便座高さとスペースが身体に合っているか

手すりの位置が使いやすい場所にあるか

脱衣所と浴室の温度差が小さいか

管理会社・オーナーに相談すべきこと

浴室・トイレ手すりの追加設置許可

段差解消スロープや滑り止めマット設置可否

脱衣所の暖房器具使用・コンセント増設可否

賃貸物件でも、理由を「安全確保」として説明すれば、意外と手すりや滑り止めの設置許可が下りることがあります。具体的な設置場所や方法を伝えると承認されやすいです。

5. 共用部・周辺環境の利便性

建物内の共用部チェックポイント

エントランスの段差:スロープや自動ドアがあるか。傾斜は5%以下(1mで5cm以内)が理想。

廊下幅:車いすや歩行器利用でもすれ違える150cm以上が望ましい。

エレベーターの有無:車いす利用なら内寸135cm×140cm以上、操作ボタンは座位でも届く位置か。

手すり設置:長い廊下や階段、スロープに手すりがあるか。

照明の明るさ:共用廊下やエントランスが夜間も十分明るいか。

いくら室内がバリアフリーでも、建物内の段差や狭い廊下があると外出のハードルが上がります。特に毎日通るエントランスやエレベーター周りは必ず確認しましょう。

ゴミ出し・郵便の動線

ゴミ置き場の距離と段差:エレベーター経由で行けるか、屋外なら雨天時も安全に移動できるか。

集積日や時間:朝早すぎないか(早朝の階段移動は危険)。

郵便受けの位置:立ったまま・座ったままでも届く高さか。

ゴミ出しや郵便は毎日の生活動線です。階段を使う必要があったり、距離が長いと負担が大きくなります。雨の日や荷物を持った状態でも移動できるかを確認しましょう。

周辺環境の生活利便性

徒歩圏の施設:スーパー・ドラッグストア・病院・銀行・郵便局など。

公共交通のアクセス:バス停や駅までの距離、道の傾斜、屋根付き歩道の有無。

騒音・治安:大通り沿いや夜間人通りが少ない道は安全面も考慮。

近くに買い物や病院がそろっていると、生活の安心感がぐっと高まります。地図だけでなく実際に歩いて距離感や道の状態を確かめることが大切です。

緊急時対応のしやすさ

救急車のアクセス:建物前まで入れるか、ストレッチャー搬入可能な通路幅があるか。

近隣の医療機関:内科・整形外科・救急対応病院の位置と距離。

非常時の避難経路:車いすや歩行器で避難できるルートがあるか。

高齢者世帯では、いざという時の医療アクセスが生命線になります。救急車が停められない建物や、避難経路に階段しかない物件は注意が必要です。

賃貸でもできる共用部・環境改善の工夫(相談が必要)

エントランス前に滑り止めマットを敷く(共用部使用許可が必要)

郵便受けや掲示板に踏み台を置く(安全固定必須)

ゴミ出しを宅配型回収サービスに切り替える

荷物運搬用の軽量カートを活用

内見時の実践チェックリスト

エントランスや共用廊下に段差がない(またはスロープあり)

エレベーターのサイズと操作位置が利用しやすい

ゴミ置き場や郵便受けまで安全に移動できる

周辺にスーパー・病院・バス停などが徒歩圏にある

夜間も照明が明るく、防犯面が安心できる

救急車が建物前まで入れる構造になっている

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6. 安否確認・緊急時対応

安否確認の仕組み

管理会社や大家の見回り:週1回以上の安否確認サービスがあるか。

自治体の見守りサービス:民生委員や郵便配達員による見守り制度の活用可否。

センサー式見守りシステム:トイレや玄関の動作センサーで長時間反応がないと通知。

緊急通報装置:ペンダント型や壁スイッチ型の緊急ボタン設置有無。

一人暮らしや高齢者夫婦世帯では、日常の中で倒れたり体調を崩しても発見が遅れるリスクがあります。管理会社や自治体のサービスに加え、センサーや通報装置を組み合わせると安心感が高まります。

緊急時の連絡体制

連絡先の登録:家族・親族・かかりつけ医・管理会社の連絡先を事前登録。

24時間対応の窓口:夜間や休日も繋がる緊急連絡先の有無。

緊急搬送時の鍵の取り扱い:緊急時に鍵を開けられるよう、キーボックスや管理人による保管体制を確認。

発見後の対応スピードが生死を左右します。緊急時に誰が、どのように部屋へ入れるか、連絡ルートが明確かを事前に把握しておきましょう。

建物構造と緊急対応のしやすさ

救急車の停車位置:建物前まで乗り入れ可能か。

ストレッチャー搬入経路:エレベーターや廊下の幅、玄関ドアの開口幅が十分か。

避難経路:車いすや歩行器利用でも避難可能なルートがあるか。

非常用設備:火災報知器、スプリンクラー、非常灯の有無と設置位置。

救急車や消防がスムーズにアクセスできるかは見落としがちなポイントです。実際にエレベーターや通路幅を測ってみると、想像以上に狭い場合もあります。

賃貸でも導入できる見守り・緊急対応機器(原状回復OK)

ペンダント型・腕時計型緊急通報ボタン(通信回線内蔵)

室内センサー(人感・開閉・温湿度連動)

スマホ連動カメラ(プライバシー配慮のモーション検知型)

簡易型キーボックス(暗証番号式)

スマートロック(家族・管理会社とデジタル鍵共有可)

内見・契約時の実践チェックリスト

見守りや安否確認のサービスがあるか

緊急時の連絡先と対応時間が明確か

緊急搬送用の経路が十分な幅で確保されているか

救急車が建物前まで入れるか

避難経路が車いす・歩行器でも使えるか

自分でも後付けできる見守り機器の設置可否を確認したか

管理会社・オーナーに相談すべきこと

緊急通報装置や見守りセンサーの設置許可

鍵の管理方法(キーボックス設置や合鍵保管)

避難経路や緊急搬送ルートの事前確認・共有

管理会社やオーナーも高齢者の安全確保には協力的な場合が多いです。契約前に相談しておくと、後からの設置やルール変更がスムーズに進みます。

7. まとめ

高齢者向け賃貸を選ぶ際は、室内だけでなく玄関・出入口、室内移動、水回り、共用部、周辺環境、そして安否確認・緊急対応まで総合的に確認することが重要です。

段差や手すり、通路幅などのバリアフリー性は日常の安全を左右し、エレベーターやゴミ出し動線、買い物や医療機関の近さは生活のしやすさに直結します。さらに、見守りサービスや緊急搬送ルートを確保しておくことで、万が一の際も安心です。

内見時はチェックリストを活用し、実際に歩いて確かめることが失敗を防ぐコツです。安全・快適・安心を兼ね備えた住まいを見極めましょう。

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