1. はじめに
築年数が古い物件は、家賃が安く魅力的に感じられる一方で、老朽化による不具合や安全面のリスクが潜んでいることもあります。
外壁や屋根の劣化、配管や電気設備の故障、水漏れやカビなどは、入居後に発覚すると修理や対応に時間と費用がかかる場合があります。こうしたトラブルを避けるためには、内見の際に建物や設備の状態をしっかりと見極めることが重要です。
本記事では、専門知識がなくても確認できる老朽化のサインとチェックポイントを解説し、安心して長く住める物件選びのヒントをお届けします。
2. 建物外観で分かる老朽化のサイン

内見時は、室内に入る前に建物全体を外から観察しましょう。外観には、管理状態や劣化の進み具合がはっきり表れます。
外壁の状態
ひび割れ(クラック):髪の毛ほどの細いひびでも、雨水が侵入して内部劣化を進める原因になります。
塗装の剥がれ・色あせ:防水機能低下のサイン。触ると粉がつく場合は塗り替え時期。
カビ・苔の繁殖:排水不良や日当たり不足、湿気が溜まりやすい証拠。
屋根・雨どいの劣化
屋根材のズレ・欠け:台風や地震の影響で損傷している可能性。
雨どいの歪みや詰まり:雨水が溢れて外壁や基礎を傷めるリスク。
共用部の安全性
階段・手すりのサビやぐらつき:長年の使用やメンテナンス不足が原因で、転倒や落下の危険。
共用廊下やエントランスのひび割れ:基礎や構造の弱まりを示す可能性。
敷地や周辺環境の管理状況
雑草や植栽の放置:管理体制のずさんさが建物の老朽化を早める要因。
ゴミ置き場の清潔さ:定期的に清掃・管理がされているかの目安になる。
ポイント
築年数が新しくても、外観にこうしたサインが多い場合は管理が不十分で、将来の劣化リスクが高まります。逆に築年数が古くても、外壁や屋根がきちんと手入れされていれば安心度は高いといえます。
3. 室内で確認すべきポイント

室内は毎日過ごす場所であり、老朽化の影響が生活に直結します。内見時は、見た目のきれいさだけでなく、床・壁・天井・水回りの状態を丁寧に観察しましょう。
床の状態
傾きの確認:ビー玉やスマホの水平器アプリで転がり具合をチェック。傾きは基礎や床下の構造不良の可能性。
きしみ音や沈み込み:床材や下地の劣化、湿気による木材腐食のサイン。
壁と天井の異常
壁紙のシミ・剥がれ:雨漏りや結露、配管からの水漏れ跡。
天井の変色や膨らみ:過去の雨漏り、あるいは現在進行中の水漏れの疑い。
カビや異臭:換気不良や断熱性能の低下が原因の場合も。
窓まわり・建具
窓枠やサッシの腐食・サビ:結露が頻発しているサイン。
窓やドアの開閉のしにくさ:建物の歪みや湿気による木枠の膨張が原因。
水回り(キッチン・浴室・トイレ)
水栓のサビ・水漏れ:配管老朽化やパッキン劣化の証拠。
排水口の流れと臭い:排水管詰まりや下水の逆流防止機能の不具合を示す。
浴室のタイル割れや目地カビ:防水層劣化で水が内部に浸透している可能性。
ポイント
室内の小さな異変は、将来的に大きな修繕が必要になる予兆です。築年数に関係なく、入居前にこれらを見逃さないことが大切です。
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4. 設備の劣化を見抜く方法


設備の劣化は見た目だけでは分かりにくいことが多く、放置すると安全・快適性に直結します。内見時は「製造年ラベルを探す」「動作を確かめる」「異音・異臭・水漏れの兆候を探す」を基本にチェックしましょう。
電気設備(分電盤・ブレーカー・コンセント)
見るべきポイント
分電盤(ブレーカー箱)に製造年や交換履歴の表示があるか。古い分電盤は安全性が低下するため、10〜15年が交換の目安です。
コンセント周りに焦げ跡・変色・強い熱感(手で触れないで確認できる範囲の「変色」)がないか。
コンセントのぐらつき、差し込みにくさ。
簡易テスト/注意
ブレーカーの主幹や漏電遮断器(ELB/漏電ブレーカー)があるかを確認。頻繁にブレーカーが落ちる場合は電気系統の劣化や容量不足の可能性。
※感電や機器損傷の恐れがあるため、分電盤の内部を素手で触ったり分解したりしないでください。管理会社に点検履歴を確認してもらいましょう。
給湯器・ボイラー
見るべきポイント
給湯器本体に貼られた製造年ラベルや型式を探す(多くは本体側面に表示)。給湯器はおおむね10〜15年が寿命の目安で、10年を超える機器は故障リスクや部品調達の問題が出やすいです。
異音、温度が安定しない、点火に時間がかかる、外装のサビや水漏れ跡がないか確認しましょう。
実務的アドバイス
給湯器は冬場にトラブルが出やすいので、最終点検日・保守契約の有無・部品の保有期間を確認すると安心です。メーカーで生産終了から一定年数で部品供給が難しくなることがあります。
給排水・配管(見える箇所)
見るべきポイント
浴室・キッチン・洗面所の配管露出部にサビ・腐食・水染みがないか。蛇口から赤水や濁り水が出る・水圧が極端に弱い場合は配管劣化や詰まりの疑い。
配管材質によって寿命が変わります(例:PVC系 20〜40年、銅管 30〜50年、鋼管 15〜30年など)。建物の築年や配管更新の有無を確認しましょう。
注意点
古い建物ではかつて使われていた鉛管や亜鉛めっき鋼管が残っている可能性があるため、築年の古い物件では特に配管材質を確認する価値があります。
空調・換気(エアコン・換気扇)
見るべきポイント
室内外機に貼られた製造年ラベルを確認。エアコンの寿命は目安で約10年前後〜14年程度と言われています(使用状況で差あり)。
異音、冷暖房の効きが弱い、室外機からの水だれ(ドレン)や腐食があれば要注意。
換気扇は羽根の汚れ・空気排出が弱い・異音がないかをチェック。換気機能が弱いと結露やカビの原因になります。
簡易チェック
冷房・暖房を短時間稼働させて冷暖感や異音の有無を確認(室内機・室外機双方)。
ガス設備(ガスコンロ・配管・ガスメーター)
見るべきポイント
ガスのニオイ(異常な臭い)は即通報レベルの危険サイン。バーナー周りの黒ずみ(不完全燃焼の痕)や接続部の腐食・ぐらつきがないか確認。ガスメーターや元栓周辺に水やサビがないかもチェック。
実務的アドバイス
古いガス器具は安全装置が古い場合があるため、製造年・点検記録を聞き、心配なら専門業者による点検を依頼してもらいましょう。
共用設備(エレベーター等)
見るべきポイント
エレベーターがある建物では、保守点検表(定期点検・定期検査の記録)が掲示されているか確認。
エレベーターは法令上定期検査・報告が義務付けられており、点検記録の有無は管理体制の良し悪しを示す重要な指標です。
内見チェックポイント
分電盤の製造年・「漏電ブレーカー」
給湯器と屋外機(エアコン)の製造年ラベル
シンク下・洗面台下の配管に水染み・赤錆がないか
バスルーム天井・壁に変色や膨らみ(過去の水漏れ痕)がないか
コンロ・換気扇の着火・換気動作を短時間確認
エレベーターや集合ポストの掲示に保守点検表があるか
危険サインがあったらどうするか
ガス臭いや配電盤の焦げ跡、床の明らかな傾き・大きな水漏れ跡がある場合は契約前に必ず確認・是正を要求。修繕見積を出してもらうか、条件交渉(家賃値引き・修繕完了を条件に契約)を検討しましょう。重大な安全リスクがある場合は内見を中止する選択肢も重要です。
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5. 管理状態をチェックする

建物の老朽化は「構造」だけでなく、日々の管理状態が大きく影響します。管理が行き届いているかどうかは、入居後のトラブル発生率や修繕の先送りリスクに直結します。
内見では見た目だけで判断せず、書類・掲示物・住民の様子まで含めて総合的に確認しましょう。
管理の主体と運用形態を確認する
誰が管理しているか(管理会社名/自主管理か)を必ず聞く。
管理会社委託:常駐管理員がいるか、巡回頻度はどれくらいかを確認。対応の速さに差が出ます。
自主管理:管理組合の運営力(理事会の活動状況)が重要。住民の負担や手続きが大変な場合あり。
共用部・掲示物で見る「管理の本気度」
清掃状況:エントランス、階段、廊下、ゴミ置き場の清潔さ。照明切れが放置されているか。
設備点検表の掲示:エレベーターや消防設備、排水ポンプなどの点検記録が掲示されているか確認。定期点検の有無は重要な管理指標です。
掲示板の更新頻度:掲示物が古いまま(数年以上更新なし)だと管理が停滞している可能性。
書類で確認すべき重要項目(管理会社に請求)
長期修繕計画書(長期修繕計画):今後の修繕予定と概算費用、積立計画が明確か。
修繕履歴(過去5〜10年):大規模修繕や設備交換の実績。頻繁な特別徴収がないか。
修繕積立金残高・管理費の収支報告:残高不足や過去に臨時徴収が多かった形跡は要注意。
管理規約・総会議事録(直近数年分):理事会の議論内容やトラブル対応の記録から運営の透明性を読む。
※これらは入居前に閲覧をお願いして差し支えない書類です。提示を渋るようなら理由を聞きましょう。
住民・近隣へのヒアリング
管理員の対応はどうか、夜間の物音や共用部の使われ方、ゴミ出しマナーなど、近隣住民の声は実情を知る好手段。内見時に居住者と軽く会話できれば本音が聞けます。
「この建物で困ったことはありますか?」と簡潔に尋ねると良い。
内見で使える質問例(管理会社/大家へ)
内見で使える質問事項
「管理会社名と管理形態(常駐/巡回/自主管理)は?」
「最後の大規模修繕はいつ行いましたか?次回の予定は?」
「長期修繕計画書と直近の会計報告、修繕積立金の残高を見せていただけますか?」
「過去5年の特別徴収や臨時徴収の履歴はありますか?」
「管理員(いる場合)の常駐時間や巡回頻度は?」
要注意サインとその対応
要注意サイン:掲示物の放置、照明切れ放置、点検表がない・破損している、ゴミ置き場の荒れ、管理員が不在で連絡が取れない、修繕積立金が極端に少ない。
対応法:契約前に書面で「修繕完了」「点検実施」を条件にする、家賃値引き交渉、あるいは提示書類の開示を要求。重大な安全リスクがある場合は契約を見送る判断も正当です。
6. まとめ
老朽化のリスクは築年数だけでなく、建物の管理状態や設備の劣化度合いにも左右されます。内見時には、外観・室内・設備・管理状況の4つを総合的に観察することが重要です。
外壁のひびや錆、室内の傾きや水漏れ跡、設備の作動確認、共用部の清掃や修繕履歴の確認など、目に見えるサインから将来のトラブルを予測できます。
さらに、書類や住民の声から運営の健全性を判断することで、入居後の不安を大きく減らせます。本記事のチェックポイントを参考に、安心して長く暮らせる住まいを選びましょう。
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